神話の森のブログ

日本の神話や民俗、また近世農村研究

星の降る木


川越市の喜多院(川越大師)に明星杉という老杉があった。
「むかし尊海僧正が、手車に乗ってここに来られた時、池の中から光が輝き、明星がしばらく老杉の梢にかかっていた。また、竜が昇天出来ず、何とかして昇ろうと努めていると、杉の梢に竜の目が、星のように光って見えた」と、石上堅著『木の伝説』にあるのだが、ちょっとわかりにくい文章である。

尊海僧正とは喜多院の開祖である。
池の中で輝いたものが明星なのか、明星は天から降って梢にかかったのか。
とにかく文章を逆から読むと、杉の梢に2つ星のように光るものがひっかかって見えたが、それは池から天に昇ろうとした竜の目だったということだろう。竜は池と天上を行き来して、たまたま天に昇ろうとしたところを尊海僧正に見つかった。しかし天から二つの明星を輝かせながら降ってくるということもあるのだろう。

天から星が降って大木の梢にひっかかるという話は各地に多い。
山口県都濃郡の青柳浦に大星が降り、神託によって妙見社を祭り、「降り松」という。
島根県美濃郡美濃村の「星見の松」も三星が降ったことによる名で、この時の神託の中に「神跡をこの井戸にのこす」とあるので、降った星は水神なのだろう。
長野県南佐久郡北牧村の「星見の松」は、8月27日の松原神社の祭に、日中に星一つ松の梢に現れるといい、その日の正午に松にのぼって空を見ると、北西の方向に星が見えるという。星を見て耕作の時期などを知ったのではないかと石上氏はいう。

これらの星の降った話では、農耕のための水をもたらすとともに、稔りをもたらし、農耕の季節をもつかさどるのが水神であり、それは星でもあったということなのだろうと思う。
水神からの神託があった話では、神と人とがもっとからみあったような伝説ではない。最初に水神を祭った人の子孫が語り伝えたものがあったかもしれないが、資料不足でなんともいえない。
次回は、人が星に会いに行くような話を検討してみたい。

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