『ツクヨミ・秘された神』

戸矢学著『ツクヨミ・秘された神』(河出書房新社)は3月の発行だが、興味をわかせる記述も多い本である。
古事記において三貴子と呼ばれる、天照大御神、月読命、須佐之男命の三柱の神は、それぞれ対等の姉弟のようでもあるが、なぜか月読命だけが事跡や物語を多く持っていない。一方で三種の神器に数えられる鏡・勾玉・草薙剣のうち、鏡は天照大御神に、剣は須佐之男命に縁のあるものだが、勾玉が不明である。勾玉と月読命の関係をめぐって、話が進んでいくわけである。
アマゾン ツクヨミ・秘された神
ところで江戸時代の国学者・平田篤胤は月読命は須佐之男命と同一神だとしたのだが、幕末の地方の知識層には平田国学の影響がかなり大きかったらしく、それ以前の月読命の存在が須佐之男命の名のもとに習合されてしまった可能性のことを考えてみたいと思ったことはあるのだが、なかなか難しいものである。
Comments