すさまじきオヤジギャグ

むかし高校の古文のテストで、「すさまじ」の現代語訳を書けという問に、「しらける」という流行語を書いてしまって良い点をもらえなかったことがある。

枕草子に「すさまじきもの」という段がある。
http://www.h3.dion.ne.jp/~urutora/makuranosousi.htm#su
そのなかの牛車の話に……
必ず来ると言った人(男)に女が牛車を差し向けて待っていると、牛車が帰って来た音が聞えたので、門が見えるところまで出てみた。ところが牛車は門の前を通り過ぎて行って、脇の車庫に入ってしまった。男は今日は来ないらしい。……こういうのが「すさまじ」ということのようである。期待を持たせてがっかりさせるもののこと、という感じで、辞書ではよく「興ざめする」意味と書かれる。

枕草子の冒頭には「すさまじきもの。昼ほゆる犬。春の網代。三、四月の紅梅の衣……」とある。
「春の網代」というときの「網代」とは、冬に川の流れの中ほどに仕掛けておく魚を採る篭のことで、網代は冬を連想するものである。また「火おこさぬ炭櫃」も「すさまじきもの」というからには、「期待をさせてがっかりするもの」のほかに「寒い」という意味もあるのだろうと、金田一春彦氏の本にある。
「三、四月の紅梅の衣」とは、桜や牡丹の季節に、梅の模様の衣を着ている人を見たら、梅の季節を思い出して寒々しいということだろう。

さてちょっと知性派のようなおじさんの話を、まあまあ良い話だなと思って、続きを期待しながら聞いていると、突然オヤジギャグのダジャレを言い出す。こういうときに若い人は「さむい」と言う。「寒い」を意味する言葉を「がっかりする」という意味でも使うのは、現代の若者も、清少納言も同じだということになる。(ちなみに、こういうダジャレをある時代の高校生は「しらける」と表現した)。

「すさまじい」は「凄じい」と書くが、平安時代の辞書には「凄」という漢字に「さむし」という訓が書かれているという(金田一氏による)。「寒い」という意味から「ものすごい」という意味になるのは、寒気がして鳥肌が立つほど驚いた、または恐ろしいという意味なのだろうか。
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