安寿と厨子王、神と仏

『安寿と厨子王』の物語を懐かしく思って、楠山正雄の再話(講談社学術文庫)で、また読んだことがあります。
そのとき、物語の中で、神仏に関する描写というか場面が三ヶ所ありました。どんな場面かというと……

1 山椒大夫の屋敷に二人がとらわれの身となっていたとき、怪我をした厨子王の身体に観音様の小さい仏像を当てると、怪我が回復したこと。病気平癒の御利益ということ。

2 屋敷を一人で脱出して京へ行った厨子王に、のちに後見人となってくれる貴族の男を引きあわせてくれたのが、清水(きよみづ)の観音様であること。一種の縁結びの御利益。

3 死んだ安寿姫は、祠にまつられたこと。祠が小さい神社の意味だとすると、死後は神々に仲間入りしたことになる。

つまり、現世利益は仏様の役割で、死後は神様の役割になっているわけでする。

今の日本人の多くは、縁結びや健康祈願といった現世利益のためには、神社におまいりし、死んだ後はお寺のお世話になるのが普通です。それが安寿と厨子王の話では逆になっているのです。そんなところが、日本の神仏の歴史の謎の一つだと思うのですが、その答えについては、まだよくわかりません。

その後の安寿と厨子王と母の話は、佐渡でのできごとになっています。
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