左と右

食卓の上には、左に御飯があり、右に汁物を置く。主食が左であることは、日本では左を優位なものと考えてきた歴史があるらしいからである(例外もあるが)。
一匹の魚は、頭を左にして置かれる。幼児に魚の絵を描かせると決まって頭を左、腹部を下に描くそうだ。人の肖像画も魚と同じ向きであることが多く、左頬を正面に向けて斜めに描かれることが多い。二人並んだ人物の絵では、二人がやや内側を向いて、魚と同じ向き----向って右に描かれた人のほうが、身分などの差がある場合は上であることが多い。日本史の教科書でよくみる源頼朝像は反対の向きだが、あの絵は二枚セットのもので源頼朝ではないという説が最近聞かれる。

「向って右」には、ひなまつりの雛壇では、左近の桜や左大臣が位置する。右近の橘や右大臣は「向って左」である。御内裏様から見て左なので左近の桜といい、左を優位なものと見るのためだが、昔の京都御所での配置も同様でそれにならったわけである。京都で左京区とは御所から見て左側方面のこと。神社の配置も同様で、一対の狛犬の口を開いているほうが社殿から見て左、閉じているのが右である。芸能の舞台でも、舞台から見て左を上手というが、しかしこれは「向って右」のことである。
ややこしくならないためには、地図や建物の配置図を思い描けばよいだろう。真ん中に縦の線を思い描き、右側を上位とみるわけである。神社の参道を歩くときは控えめにして下位の左側を歩く。結婚式では向って右が新郎側である。これは古代の婿入り婚で男性はお客様待遇だったことから来ているのかもしれない。

その新郎の左の傍らには新婦なのだが、雛壇の上の内裏様はどうだろうか。全体の配置から向って右を上位として内裏様、向って左にお姫様という考えも古くから根強い。一説によると昭和天皇の即位礼のときに天皇様の向って右に皇后様がお立ちになられたのが写真映像で庶民の目にするところとなり、それ以来それに習って関東などでは御内裏様を向って左に置くようになったというのがある。実は天皇陛下は向って左ではなく中央に立たれ、そこから見て左側に皇后様が立たれたのである。一番優位なのは左よりも中央である。しかし内裏様については、江戸時代の絵で内裏様を向って左に描いたのを見たことがあるのでなんともいえない。
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