石鈴と安産の石

自然の石でできた鈴、石鈴(いわすず)というのを、埼玉県のある神社で拝見する機会があった。直径20cm弱の球形のその石を敬虔な気持ちで両手に取ってみると、思ったより軽かった。火山岩でできたものなのだろう。石を耳のそばで少し振ってみると、カラカラと音がした。石の中に空洞ができていて、空洞の中に小石のようなものが封じ込められているようだった。構造は確かに鈴である。この石は明治の初めまで宮司家に伝わったものとのことであった。

その後、南方熊楠のある本で、似たような石について述べられた部分に出くわした。
駿河国、富士山の裾野のある村で、同様の形状の石が保存され、妊婦がお産をするときにその石を腹部に当てると安産になるということだった。「孕み石」と呼ばれていたそうである。
石の中に小さい石を孕んでいる状態の石なので、孕み石という名で呼ぶのもうなづける。

九州では、むかし神功皇后が八幡神(応神天皇)をお生みになるときにお産を軽くした石があったという伝説もある。
出雲地方では、古墳からの出土品で、埴輪と並んで石鈴というものがあり、その画像を見たが、小さい焼物のように見えた。石なのかどうかよくわからない。
石鈴を伝えた宮司家は江戸時代までは村の名主で古墳上に富士浅間神社を祀り富士講を組織して村人こぞって富士登山に出かけたという。富士山に関係ある石の可能性もなきにしもあらず。
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