若水汲み

手水「かつぎや」という落語がある。かつぎやとはつまり縁起かつぎの人のことである。
縁起かつぎで、目出度いものが大好きという呉服屋の旦那が、元日の朝、井戸に橙を供えて歌を唱えるようにと、下男に命じた。その歌は、

  あら玉の年立ち返る朝(あした)より若柳水(わかやぎみづ)を汲み初めにけり

下男は歌を間違えて失敗してトンマな話になる。

若柳水とは、一般には若水と言うことが多く、元日の朝に汲む水のこと。その水で口をすすぎ、また煮炊きしたものを神仏に供え、同じものを「おさがり」として家族もいただく。若水は、その年の邪気を祓い、その一年の無事を約束してくれる水であるという。文字の通り、年の始めに命を若返らせる水、生まれ変われる水のことである。ところによっては自然の泉のわき出ている場所に出かけて汲むこともあるらしい。若水を額につける習俗もあり、禊(みそぎ)の一種なのだろうともいう。

落語では、その後、客人が来て旦那と娘の二人を褒め、「大黒様のようだ、弁天様のようだ」と言い、「この家には七福神がいる」と言う。二人では二福ではないかと旦那が問うと、「こちらの御商売が呉服屋(五福)でございます」というのが落ちである。

落語の下男のように、新年や節分の行事の準備をする役割の者を、年男(としおとこ)という。昔の大きな家では下男などの仕事だったが、一般家庭では世帯主の仕事である。お供え物を年神さまや神仏に供えるのは男の仕事だった。節分の豆まきも同様である。(現代では女性による豆まきも行なわれる)。
=====昨年の"幻のブログ"歌語り歳時記の記事を補筆したものです12/31=====
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