冬の季節のお正月

まもなくお正月。
今の太陽暦では、お正月は真冬の時期にあたるので、子ども時代に「新春」とか「初春」「迎春」という言葉を耳にしたとき、なぜ春というのか不思議に思ったことは誰にもあったのだろうと思う。陰暦(旧暦)というのがあってどうのこうのと、大人たちに教えてもらっても、すぐには実感できないものである。
けれど日本の古典や歳時記は、陰暦を知らなければわからない部分も多い。

古今集のいちばん最初の歌に、こんなのがある。

 年の内に春は来にけり 一とせを 去年(こぞ)とやいはん 今年とやいはん 在原元方

詞書に「ふるとしに春たちける日よめる」とあって、新年にならないうちに立春が来たことを詠んだ歌である。旧暦の一月一日は、立春の前後の30日間のうちのどれかの日に当り、年によっては、立春の後に新年が来ることもある。それだけのことを述べた歌なので、理屈っぽい歌と評されることもあるようである。とはいえ、現在が今の年なのか古の年なのか、今と古がその区別を越えて年を巡って一つにつながっていることが古今集の題名の意味でもあるのだろう。

民間では元旦の行事より1月15日の小正月のほうが重要だったという。旧暦の小正月なら、立春の前に来ることはないので、新春らしい祝になる。同様に古い年の厄祓いをした節分の豆まきも小正月の前に済ませることができる、という理屈になる。
正月三が日というのは重視されず、三が日の初詣というのもなかったようだ。正月とは1月の一ヶ月間のことなので、一ヶ月のうちにお詣りするのが、その年の最初のお詣りである。初詣は、太陽暦になった明治時代からだんだん盛んになり、大正時代ごろになってから俳句の季語にも加わった。それ以前は季語にはなかったというか、庶民になじみのある言葉ではなかったらしい。

太陽暦以後、新年を祝う行事と、春を迎える行事は、分離されて行なわれる傾向になる。
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Comments

こるち | 2005/12/22 15:42
はじめまして。しばらく前から興味深く拝見させて頂いてます。神話はともかく、年中行事の由来とか当たり前にやっててよく知らなかったりするので、とても面白く思います。

もうすぐクリスマスですが、大晦日にはお寺で除夜の鐘を突き、新年には神社に初詣する。
日本人は無宗教が多いといわれてますが、どうなんでしょう?私は果てしなく寛容な信仰心を持ち合わせているとも思えるんですが。

それにしても、初詣があまり重視されなかったってのは意外です。昔はもっと寒くてみんな出歩きたくなかったとか?

あと申し遅れましたがリンクを張らせて頂きました。
森の番人 | 2005/12/23 00:48
こちるさん、こんばんは
初詣については今の辞書にも「正月、その年初めて神社や寺に参詣すること。はつまいり」とありますから、「正月」という月の30日間のうちに参詣することなのでしょう。元旦の日には、家に年神様を迎えますので、若水汲みに始まって家でしなければならないことがたくさんあったような話です。
日本人は外国の宗教儀礼も日本風にアレンジして取り入れてしまうところがあるようですね。歴史を見ても中国やインド、そして欧米……、先進国ばかりですから必ずしも充分な寛容とは言えないと思いますが。
それはさておき、リンクありがとうございます。年内に「ブックマーク」の追加を予定しています

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