近つ飛鳥と近淡海 神奈備 2002/08/05 (月) 15:59 No.38
> 「ちかた、ちかつ」の神とは、社を鎮祭する場所を川辺から飛び立つ鳥の行方によって卜定したことから来た名前なのではないかと思ふ
興味深い論述です。
『古事記』孝昭(カウセウ)天皇の条 兄(イロエ)天押帯日子命(アメオシタラシヒコノミコト)は、・・・、近淡海国造(チカツアフミノクニノミヤツコ)の祖なり。
『古事記』水歯別命(ミヅハワケノミコト)と曽婆訶理(ソバカリ)の条 かれ、其地(ソコ)を号(ナヅ)けて近(チカ)つ飛鳥(アスカ)と謂(イ)ふ。
遠淡海は浜名湖、遠い飛鳥は大和国の飛鳥のことのようです。飛鳥の拠点は難波宮のようです。淡海も拠点が西なら該当します。 これから考えると「チカツ」は単に「近い」の意かと思っていましたが、飛鳥の冠、淡海の冠としてしか『古事記』には登場してこないこともあり、これは管理人さんの「川辺から飛び立つ鳥の行方」の指摘の中にきちっと水と鳥とが入っていることとドンピシャリだと思います。 この概念に何らかの遠近感の概念が入ったものと考えることは出来ないのでしょうか。
Re: 近つ飛鳥と 管理人 2002/08/06 (火) 02:32 No.40
> > 「ちかた、ちかつ」の神 これまであまり取り上げられなかったテーマかもしれません。 東国の遠江(とほつあふみ=浜名湖)は、琵琶湖(淡海)に対して"遠つ"といひ、その結果、"近つ淡海"の語ができ、"近江"の表記となったと辞書などにあると思ひます。しかし"飛鳥"と"近つ飛鳥"は、語の成立のしかたが違ふかもしれません。その意味では「ちかつ」の神との関連も調べてみる必要はあると思ひます。 万葉集には「遠つ人、遠つ神、遠つ国」といふ言葉はありますが「近つ・・」といふ言葉はありません。「遠つ人、国」は随分と昔の人、黄泉の国といふ意味で、最近亡くなった人を"近つ人"とは言はず、また黄泉国の遠さはいはば絶対的な遠さです。"近つ人"とは"現在の人"の意味になりますから、それなら"現し人"と言ったほうがぴったり来ます。"ちかつ飛鳥"の"ちかつ"とは、近いといふ意味ではないかもしれません。 「ちかつ神社」は兵庫県や九州地方にもいくつかありますが、その土地のことがよくわからないので、今回は取り上げませんでした。今後の課題になります。 全国の「ちかつ神社」一覧表を該当ページに追加しておきました。
Re^2: 近つ飛鳥 管理人 2002/08/06 (火) 11:00 No.41
> "ちかつ飛鳥"の"ちかつ"とは、近いといふ意味ではないかもしれません。 「諸社つれづれ」のページをお読みいただければ、言ひたいことはおわかりと思ひます。 「ちかつあすか」とは「春日のかすが」と同じ作りの言葉に見えます。 枕詞の古いものは、空見つ大和、うまさけ三輪、ころもで常陸、さねさし相模、など、五音には足りないものばかりで、「飛ぶ鳥の明日香」はなぜか新しい洗練された五音のスタイルです。「ちかつ」は更に少ない三音ですが「春日の」ももとは音が少なかったかもしれません。「ちかつ」は「飛ぶ鳥の」と似た意味の言葉かもしれない。日本語、特に古語に、米や稲を意味する言葉が山ほどあるのは、日本人が米に深く関ってきた民族だからですが、鳥に関しても、いろいろな古語があったものと想像できます。 以下は勝手な想像ですが、「ちかつ飛鳥」が使はれなくなって「飛ぶ鳥の飛鳥」が一般的になった後に、難波に残る昔の語の「近つ飛鳥」が思ひ出され、昔の難波から明日香への何かの移動の記憶から、「遠つ飛鳥」の言葉ができたのではないかと。
Re^3: 近つ飛鳥 神奈備 2002/08/07 (水) 12:52 No.42
飛鳥についての「遠つ飛鳥」、「近つ飛鳥」は両方とも大和国内に求める説などいろいろあるようです。また「飛鳥」そのものも、「安宿」から「ア」+「スカ:須賀、蘇我、など」、「二日」など諸説があり、言語音痴の出る幕はありませんが、
管理人さん> 「ちかた、ちかつ」の神とは、社を鎮祭する場所を川辺から飛び立つ鳥の行方によって卜定したことから来た名前なのではないかと思ふ。
から考えると、「ちかつ」は「茅草(ちかや)の繁茂」する」あたりとすれば、砂地の飛鳥や琵琶湖には茅草が生えていたとしても不思議ではないですね。茅草の中から鳥の群が飛び出す、富士川を思いますね。飛ぶ鳥にちかつく青草話でした。
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