むかし九州に桧垣(ひがき)の御(ご)といふ遊女があり、風流で華やかな生活をしてゐたが、藤原純友の乱の頃から姿が見えなくなった。太宰府に来た都の男が、遊女に興味をもって探して歩いたところ、白川といふところで、粗末な家に住んで水汲みをしてゐる白髪の老婆が、桧垣の御だと教へられた。その家を尋ねたが、老婆は恥ぢて出て来ず、歌だけを返したといふ。(大和物語) ○むばたまの吾が黒髪は、白川のみづはくむまでなりにけるかな 桧垣の御 熊本市を流れる白川のこととされるが、他にも候補地がある。みつはは水神の名。