吉野の神

 十津川村玉置川の玉置神社(玉置山)の弓神楽は、本木といふ木で作った白い弓矢を持ち、巫女の衣装をつけた男子の神子が奏する珍しい舞楽で、白河院の御前でも奉納されたといふ。

 ○熊野なる玉置の宮の弓かぐら、つる音すれば悪魔しりぞく    弓神楽の歌

 東吉野村の丹生川上神社は、水の神の罔象女(みつはのめ)神をまつり、天武天皇の御代の創建といふ。祈雨のときは黒毛馬を、雨を止めるには白馬を奉納するといふ。

 ○この里は丹生の川上ほど近し 祈らば晴れよ五月雨の空     後醍醐天皇

 黒滝村粟飯谷の粟飯谷妙見神社(稲荷神社)は、子安神、宇迦之御魂神ほかをまつり、安産の神ともされる。幕末の国学者の歌。

 ○うみの子をうら安かれと守るこそ、神のみたまのしるしなりけれ  鈴木重胤