耳無池

橿原市

 むかし、縵児(かつらこ)といふ美しい娘に、三人の男が求婚した。縵児は「三人の心は石のやうに変ることのない貴いものだといふのに、女の身は露のやうにはかないものです」といって、耳無の池に身を投げた。それを知った三人の男は、声を上げて泣きながら、歌を詠んだ。(万葉集)

 ○耳無(みみなし)の池し恨めし。吾妹児(わぎもこ)が来つつ(かづ)かば、水は涸れなむ     万葉集3788-9

 ○あしひきの山縵の児、今日行くと吾に告げせば、帰り来ましを

 ○あしひきの山縵の児、今日のごと、いづれの隈を見つつ来にけむ

◇ 天の香具山

 ○大和には群山あれど、取りよろふ天の香具山、

   のぼり立ち国見をすれば、国原は煙立ち立つ。海原は鴎立ち立つ。

     うまし国ぞ。蜻蛉島大和の国は              舒明天皇