海石榴市

桜井市

 海石榴市(つ ば いち)は、わが国最古ともいはれる市で、三輪山の南麓の初瀬川べり(桜井市金屋)にあったといはれる。つばいちとは椿市の意味で、山の民が持参した山づと(土産)の椿の木を市に植ゑ立て、山姥がまづ鎮魂の歌舞をして、里の民と交流したものが起源といはれる。木の種類は市によって異なるが、市には必ず何かの木が植ゑられたらしい。ここで物の交換が行なはれ、やがて市として発展していった。市は、歌垣の場でもあり、片歌の交換などから、文学的な短歌の形式が形成されていったともいふ。

 ○海石榴市の八十のちまたに立ちならし結びし紐を解かまく惜しも  万葉集

 ○紫は灰さすものぞ。海石榴市の八十のちまたに逢へる子や。誰   万葉集

  (「灰さす」とは紫の染色法をいふ)