天の羽衣

中郡峰山町

 中郡峰山町の比沼麻奈為(ひぬまなゐ)神社の付近に、むかし真名井と呼ばれた泉があった。この泉で八人の天女が水浴びをしてゐたとき、子のない老夫婦が一人の天女の羽衣を隠した。天女はしばらく夫婦の養女となって酒の醸造法を教へたりしたが、天に帰らねばならないときが来た。天女は老夫婦の家を出はしたが、天に帰る方法を忘れてしまってゐた。

 ○天の原ふりさけ見れば、かすみ立ち、家路惑ひて行方知らずも

 天女は村々をさまよひ、今の竹野郡弥栄町船木あたりに留まり、奈具(なぐ)神社にまつられた。