伊勢音頭

伊勢市

 ○伊勢は津でもつ津は伊勢でもつ、尾張名古屋は城でもつ     伊勢音頭

 伊勢音頭に唄はれる「津」とは、港町としても栄えた伊勢市の港のことである(県庁所在地の津市のことではない)。伊勢音頭は、二十年に一度行はれる式年遷宮の御用材を運ぶときの木遣り唄から起こったといふ。それが古市などの花街での座敷唄になり、伊勢参りの道中唄にもなって、その曲や節は全国各地に持ち帰られ、諸国の民謡に影響を与へたといふ。

 伊勢音頭の元歌は、伊勢の比丘尼(びくに)らが歌った「(あひ)の山節」だともいふ。間の山とは、外宮と内宮の間の尾部坂のことで、ここで女芸人が唄を唄ひ、三味線のばちで旅人の投げる銭を受けたといふ。お杉、お玉といふ女性の名が伝説化してゐる。

 ○いにしへのお杉お玉が面影をうつせし女の二上(にあ)がり調子     東海道中膝栗毛