花筐

武生市味真野

 越前の味真野(あぢまの)(武生市)に住んでゐた応神天皇五世の孫、男大迹(をほど)王は、皇位の継承者に決まったので都へ上った。継体天皇である。しばらくして故郷の妃の照日前(てるひのまへ)のもとへ、天皇の文と花籠が届けられた。恋しさをつのらせた照日前は、侍女を連れて都へ旅立ち、天皇の前で舞ひ狂ったといふ。(謡曲・花筐)

 ○味真野に宿れる君が、帰り来む時の迎へを、何時とか待たむ    狭野茅上娘子

 右の歌は、天平のころ越前へ流罪になった中臣宅守の新妻、狭野茅上娘子が都で詠んだ歌。