弥彦山の周辺

西蒲原郡

 新潟市に鳥屋野潟、東どなりの豊栄市に福島潟が残ってゐるが、新潟は昔は秋田県の八郎潟のやうな大きな潟だったのだらう。地名から想像すると、北の豊浦町から弥彦山の東の月潟村あたりまで入江があり、中ほどの新津市あたりが良い港だったのだらう。弥彦山の南の山を国上(くがみ)山といふが、「くが」といふ地名は、水上から見て目印となるやうな地をいふらしい。

 ○足引の国上(くがみ)の山の山吹の花の盛りにとひし君はも         良寛

 弥彦山の東から東北には越後獅子と毒消売りの本拠地がある。蒲原郡月潟村は、戦後美空ひばりの歌に「笛に浮れて逆立ちすれば」と歌はれた越後獅子の本拠地である。越後獅子は子供ばかりの獅子舞の曲芸で諸国を歩いたが、子供たちは皆普通の農家の子であったといふ。西蒲原郡巻町には宮城まり子の歌に「わたしゃ雪国薬売り」と歌はれた毒消の里がある。こちらは未婚女性による行商で、ゴム紐などの日用品も売り歩いた。

 越後一宮の弥彦神社は、古代からの土地の神である。

 ○弥彦(いやひこ)。おのれ神さび、青雲の棚引く日すら、小雨そぼ降る     万葉集