橋本の宿、浜名湖
浜名郡新居町
奥州を平定し、建久元年(1190)に京へ上る源頼朝の一行は、各地で歓迎を受け、浜名湖の南の橋本の宿でも遊女たちの大変なもてなしがあったので、頼朝は機嫌よく歌を口ずさんだ。
○橋本の 君に何をか 渡すべき 源頼朝
臣下の梶原景時が、たはむれに下の句を付けた。
○ただ杣山の くれであらばや 梶原景時
実際は織物などの豪華な引き出物を遊女たちに与へた。頼朝は京で権大納言、右近衛大将に任ぜられ、建久三年には征夷大将軍に任ぜられた。
浜名湖はもと淡水湖で、遠江(遠つ淡海)の国名にもなったほどだが、湖から南の海へ通じた浜名川といふ短い川に架る橋のそばに橋本宿があった。明応七年(1498)の大地震以来、地殻変動によって海水が入りこみ、橋本宿も水没したので、宿場は新居宿へ移った。