春日明神と野狐

浜松市白羽町 白羽神社

 天文のころ、馬込川の河口に、白い鹿に乗った貴い神が現はれた。その夜、上流の白羽の里では、里人全員が同じ夢をみて、白鹿に乗った春日の神のお告げを聞いた。その鹿は口に麦の穂をくはへてゐたといふ。神のお告げにより、里人たちは、里の南の荒涼の地を開墾し、春日明神をまつった。これがのちの白羽神社(浜松市白羽町)である。

 それからまもなく、開墾のために住むところを失った野狐たちが領主のもとへ訴へ出た。領主は、駿河国の富士の裾野の良い土地を教へたので、野狐は歌を残して移住して行ったといふ。

 ○住み慣れし里を離れて野狐の旅もするがの富士の裾野へ

 村の耕地の中には狐塚が残ってゐる。