松が岡 万寿姫

鎌倉市

 鎌倉松ヶ岡の東慶寺は、縁切寺、駆込寺ともいはれた。

 ○出雲にて結び鎌倉にてほどき

 ○松ヶ岡ふりがなつきの経を読み

 夫婦どちらに非があってもここで三年間、にはか仕立の尼として暮らせば、女は離縁できたといふ。

 むかし木曽義仲の臣の手塚太郎の娘の唐糸(からいと)は、頼朝の命を狙ったかどで捕はれたところを、松が岡の尼僧に助けられて信州へ逃げた。しかし梶原景時に捕へられて鎌倉の洞窟に長く幽閉された。唐糸の娘の万寿姫(まんじゅひめ)は、十三の歳に侍女らとともに信州から母をたづねて鎌倉を訪れ、頼朝の前で歌舞をして、その歌舞の功徳によって母を救出したといふ。

 ○春はまづ咲く梅が(やつ)、扇の(たに)に住む人の、心は涼しかるらん。

  秋は露置く佐々目(ささめ)が谷、泉ふるかや雪の下、万年変らぬ亀がへの谷… (お伽草子)