神崎の大楠

(なんぢゃもんぢゃの木)

 香取郡神崎(かうざき)町の神崎神社は、天鳥船(あめのとりふね)命ほかをまつり、白鳳二年に、常陸国に近い大浦沼二つ塚より現在の地に遷ったといふ。広大な神崎の森は、常緑の原生林で、その山の形から、ひさごが丘、ひょうたん山、双子山、などとも呼ばれる。

 高田与清の『鹿島日記』に、社前の御神木のことが書かれ、歌もある。

 ○神代より繁りて立てる湯津桂(ゆ つ かつら)、栄え行くらむ限り知らずも    高田与清

 歌にある湯津桂(斎つ桂)の木は「なんぢゃもんぢゃ」の名で呼ばれる。むかし水戸光圀が参詣したとき、「この木はなんといふかな、さて何といふもんぢゃろか」と自問自答して感嘆されたことにより、その名となったといふ。今は「神崎の大楠」ともいふ。「なんぢゃもんぢゃ」の名で呼ばれる巨木は関東などの各地に存在し、欅、椋、楡、榎、楠など種類はまちまちだが、巨樹を神聖視しての呼び名なのだらう。神崎の大楠は「樹齢は約二千年(牧野富太郎博士推定)」と社記にある。