小桜の内侍

利根郡月夜野町

 利根郡月夜野町の村主八幡神社の境内に若宮塚がある。

 室町時代の中ごろ、この地方の長者の家に如意姫といふ美しい娘があった。姫は、その美貌と歌の才によって都に召され、小桜(こざくら)内侍(ないし)と呼ばれた。姫は後花園帝の寵愛を一身に受けたが、後宮の女たちの妬みによって都を追はれ、御子(みこ)を宿したまま故郷へ帰った。御子の明賢親王が生まれてまもないころ、都から「石の袋」を題に歌を求めて来た。姫は御子のたどたどしく口にした「いさご」の言葉から、機知に富んだ歌を送った。

 ○勅なれば石の袋も縫ふべきに、(いさご)の糸を縒りて給はれ      如意姫

 (帝の求めなら石の袋も縫ひませうが、ならばその前に砂で縒った糸をお与へください)

 御子は二才で病死し、若宮塚に葬られたといふ。