貫前神社

富岡市(甘楽郡)

経津主(ふ つ ぬし)命が、諏訪の建御名方(たけみなかた)命と、上信国境の荒船山で戦った。そのとき経津主命の陣地は、安中市鷺宮(磯部温泉の南)にあったといふ。経津主命は「抜鉾(ぬきほこ)の神」の名で磯部氏らによって鷺宮の地にまつられた。今の咲前(さきさき)神社の地である。抜鉾の神は、のちに南へ遷って、貫前(ぬきさき)神社(富岡市一ノ宮)の神となったといふ。貫前神社には経津主神と姫大神(ひめのおほかみ)がまつられてゐる。姫大神は養蚕と機織の神ともいふが不明で、かなり古い神であるらしい。

 貫前神社の裏を流れる丹生川の上流、旧丹生村を詠んだ万葉歌がある。この歌はめっき法を詠んだ歌(水銀に金を溶かして仏像などに塗り、水銀だけ蒸発させる金めっき法)といはれる。

 ○真金(まかね)吹く丹生(にふ)真朱(まそほ)の色に出て、云はなくのみそ。あが恋ふらくは  万葉集