桜川
西茨城郡岩瀬町磯部
むかし長暦(1037-40) のころ、筑紫に桜子といふ美少年がゐた。商人に拐かされて東国に売られて来たが、運良く桜川のほとりの磯辺明神の社僧の神宮寺に拾はれて、稚児となってゐた。筑紫の母は、わが子をたづねて東国をさまよひ、探し疲れて桜川の岸辺にたたずみ、桜の花びらの流れる川水をすくってみては、わが子はこの水底に眠ってゐるに違ひないと、大声で泣いた。これを見た里人が憐れんで、女を連れて神宮寺に相談にゆき、母子は再会をはたしたといふ。(謡曲「桜川」)
○つねよりも春べになれば、桜川、波の花こそまなく寄すらめ 紀貫之
磯部稲村神社(西茨城郡岩瀬町磯部)は、祈雨の神、安産守護などの神として信仰される。