白鳥の里

鹿島郡

 鹿島神宮の北方に白鳥の里がある。むかし天より飛び来たった白鳥があった。朝に舞ひ降りて来て、乙女の姿となり、小石を拾ひ集めて、池の堤を少しづつ築き、夕べには再び昇り帰って行った。少し築いてはすぐ崩れて、いたづらに月日はかさむばかりだった。さうしてある日のこと、乙女らは歌を残して天に舞ひ昇り、二度と舞ひ降りて来ることはなかったといふ。

 ○白鳥の ()が堤を つつむとも あらふ 真白き 羽壊(はこ)え    常陸国風土記

 (白鳥の(いは)が堤をつつむとも、洗ふまも憂き羽壊え白鳥      小山田与清)