立石寺(山形市山寺)〜二口峠〜うやむやの関

 ○閑さや、岩にしみ入る蝉の声                 芭蕉

 芭蕉が有名な句を詠んだ山寺から仙台方面へ抜ける二口峠付近は、全国のマタギの元祖といはれる磐司と万二郎のゆかりの地である。二人は日光の生れの猟師で、あるとき白鹿を追ったがなかなか射ることができなかった。この白鹿は、実は二荒山の神の化身で、赤城山のムカデに攻められて苦しんでゐることがわかると、二人は赤城山に行ってムカデを退治してみせた。これにより、二荒の神から諸国の山で狩りをすることを許された二人は、奥州の二口峠に住んだといふ。マタギには日光派のほかに高野派もあるといふ。

 二口峠の少し南の笹谷峠の近くに、うやむやの関があった。むやむやの関ともいふ。

 ○もののふの出るさ入るさに枝折(しを)りする、とやとやとりのむやむやの関

 「枝折」とは、榊の枝などを折って峠の神に手向け、行く手の安全を祈るもの。